生協ケアホームひだまり
敷地は、春日部駅から続く、藤棚が街路樹の「ふじ通り」から少し入った閑静な住宅街の一角にあり、敷地の東側に同じ医療生協が運営する「かすかべ生協診療所」が隣接している。3階に隣接する通所リハビリテーションを移転し、2階に認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)、1階に小規模多機能型居宅介護施設を新設し、春日部地域の医療と介護の拠点をつくる計画である。縦に積層された福祉施設を地域といかに繋ぐことができるかが課題であった。敷地は南側の前面道路に対して間口が狭く南北に細長い形状であり、狭い間口を感じさせず、人を奥へと引き込む建築的な設えを提案した。
通りに面して、人を迎え入れる庇を持つ奥行きのあるピロティを設け、利用者の送迎の待合スペースとし、その奥に地域との交流など、多目的に使える「ひだまりテラス」を計画した。地域住民がひだまりテラスから奥の小規模多機能型居宅介護施設のリビングまで立ち寄ってもらえるよう、人を引き込む仕掛けとして、1階の天井に藤棚を模した杉材と木毛セメント板による「フジダナ格子」を計画した。ピロティから奥のリビングまで連続させ、街との連続性を計画した。
1F共用部の床は、春日部の名産でもある麦わら帽子の編み込みをPタイルで表現し、天井の「フジダナ格子」と連動して、奥へと続いていく。縦に積層された福祉施設をつなぐ建物中央のEVシャフトは「生協ケアホームひだまり」の施設カラーである山吹色とし、大黒柱のように各階を貫く。各階の医療と福祉のつながりをイメージした。
構造は在来軸組構造、準耐火構造(イ準耐-2)とし、大断面の集成材の梁により柱のないピロティやリビングとし、利便性と開放感を実現した。3階は、向かい合った2本の登り梁の頂部をホームコネクター工法で接合し、燃え代設計により木梁を現し、温かみのある柱のない空間とした。外壁は、窯業系と金属系のサイディングを建物ボリュームと連動させて切り替え立面を分節することで、圧迫感の軽減を図っている。それぞれの施設にキーカラーを設定し、サイン、クロス、家具の天板に採用し、施設ごとのまとまりを作り出した。
奥行きのある施設に地域の方が自然と引き込まれていくような空間を目指した。フジダナの下に広がる、誰もが気軽に立ち寄れる医療福祉の拠点となることを期待している。
[建築概要]
主要用途:通所リハビリテーション
認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)
小規模多機能型居宅介護
主要構造:木造一部S 造 在来軸組工法
規 模:地上3階
敷地面積: 743.02 ㎡
建築面積: 441.41 ㎡
延床面積:1,277.30 ㎡
[主要仕上げ材料]
外部
屋根:ガルバリウム鋼板立てハゼ葺き
外壁:窯業系サイディング、金属系サイディング
開口部:アルミサッシ、スチールサッシ
内部
床:長尺シート、フローリング、タイルカーペット、Pタイル、畳
壁:石膏ボード+ クロス貼り
天井:岩綿吸音板、クロス
[クライアント]
医療生協さいたま生活協同組合
[協働設計]
HHAハラヒロト建築設計事務所 原 浩人
神奈川大学工学部建築学科 吉岡 寛之
メゾン一級建築士事務所 赤﨑 光基
[建築計画 介護福祉関連]
東京電機大学未来科学部建築学科 山田あすか
[構造設計]
多田脩二構造設計事務所 多田脩二・遠藤啓志
[設備設計]
共立システム設備設計 高柳穣・大和田栄男
[サインデザイン]
マルヤマデザイン 丸山智也
[施工] ポラテック
photo:鳥村鋼一